ときどき石を拾ってきてしまう。とはいえあくまでときどき、それもよほど何となくが極まっての行動だから、三、四個、海辺で拾ったガラス片と一緒にごろごろと、100円ショップで買った小さな木の皿に乗せてある。あらためて見たり触ったりすることもないから、普段は棚にしまってあって、部屋のあのカーテンの向こうに石がある、ことだけが記憶の中にはある。
石を拾ってきてはいけない、なぜなら石には念がこもっているからだ、と誰かが誰かに話しているのを小耳に挟んだ。ずいぶん前のことで、それがどういう経緯で話されたのかとかどのくらい真剣な話なのかみたいなことはさっぱりわからないけれども、わからないからかえってその言葉はもうはっきりと決まったことのように思える。それは誰の(何の)どんな念なんだろう。誰がその念の存在を言い伝えたんだろう。最初にそう言い出したのは誰だったんだろう。
眠りそびれた夜、石はカーテンの向こうにある。そのことは知ってる。何となく拾った石のふるさとはもう忘れてしまったから返しに行くこともできず、果たしてその石たちをこめられた念ごとその辺の道ばたに投げ捨てていいのか、投げ捨てたほうがいいのか、別にこのままでいいのか、わからないまま、真夜中、石と、カーテン越しに、同じ部屋に、横たわっている。
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